不動産業者を始めるのにいくらのお金が必要か(独立開業資金について)、ハウスメディアを例題に詳しく解説

「会社を設立するのには、最初にいくらのお金があればいいの?」

「会社というのは年間にいくらくらいの経費がかかるの?」

「いったいいくらの利益を上げれば会社を存続させることができるの?」

上記の質問は、しおいぬ社長が独立希望の方からよくされる質問です。

気持ちは分かります。この手の「お金」の問題が、独立を考える人たちは一番切実に知りたい問題のはずです。

そして、この「お金」の問題をしっかりと理解して独立できれば、後は自分がやろうとしているビジネスでどれだけの利益を上げることが出来るかを考えるだけで良く、「スタートでコけてそのまま倒産」ということには絶対になりません。支出と収入を完璧に把握することができれば、大成功するかは分かりませんが、失敗はありえません。

といったところで、今回は弊社「ハウスメディア」の場合を例題として、

・ハウスメディアは開業時どれだけお金がかかったか(+一般の会社の場合は?)

・毎月の経費の金額について(+一般の会社の場合は?)

・毎月いくらの利益を平均して稼ぐことができれば会社を存続させられるか(+一般の会社の場合は?)

を書いていきます。

ハウスメディアの開業時かかった費用(+一般の会社の場合での必要な開業費用)


こちらが弊社の第一期目の経費一覧です。

法人立ち上げは9月でしたが、実際に営業を開始したのは3月からですので、画像の経費は「開業時かかった資金+6か月分の運営経費」ということになります。(役員報酬が異様に少ないのは独立1年目でどれだけ稼げるか分からず、最小の金額にしていたためです。)

さて、この内「広告宣伝費」「事務用品費」「消耗品費」以外の部分はほぼ毎月の運営経費です。(減価償却費は除く)

また、広告宣伝費は月額15万円、事務用品費と消耗品費は月額8万円程、運営経費としてかかっています。

(15万+8万)×6か月≒140万円で、 「広告宣伝費」「事務用品費」「消耗品費」の合計金額から140万円を引くと、 約200万円が開業の資金としてかかったということになります。

200万円の内訳は、

・HP制作費用、不動産ポータルサイトなどとの契約金・・・約70万円

・パソコン2台、事務デスク、応接テーブルなどの購入費用・・・約100万円

・ボールペンとかの文房具や各種消耗品など・・・約30万円

といった感じです。(今だと、HP制作費用やデスクなどの設備類の費用は半額程度に出来たのではないかと感じます。)

開業当時の事務所写真。社長一人なのにデスクを5台、イスは22脚(笑)も買っていた。契約ルームには結構値段が高めの応接テーブルを設置したが、結局事務所側で契約するほうが息苦しくなく、契約ルームはほぼ使うことは無い。うーん、余計な出費だったなぁ…。

さて、開業時に必要な資金については、設備を揃えるお金だけでなく、当面の運転資金も大事です。諸説あると思いますが、私は最低でも半年分の運営経費程度の運転資金は必要だと思っています。

その理由は、開業1年目の収入が支出の丁度半分程度だった場合、半年分の運営経費が手持ち資金であれば、丁度収入+手持ち資金と支出が釣り合い、なんとか破綻しなくて済むからです。

実際、ほとんどの会社は、開業して当面の3か月は利益はほぼ0(実際私も開業3か月目までは入金が0円でした)、3か月目~12か月目までは売り上げが段々と上がっていき、最低でも2年目からは毎月の収入が支出を超えるようになってきます。(個人や少人数程度のスモールビジネスで、2年目に入っても収入が支出を超えない場合は、そのビジネスはそもそもが失敗だと考えるべきです。)

この計算で行くと、1年目の収入は年間を通じておおよそ支出の半分。つまり、前述の通り、丁度収入(年間の運営経費の半分=半年分の運営経費)+半年分の運営経費=年間の運営経費となり、破綻を免れます。

ハウスメディアの場合を見てみましょう。

年間の支出は約860万円、そこから開業時資金200万円をぬき、更に経費としては参入できるが実際に出ていくお金ではない「減価償却費」を抜きます。

すると、860万円-200万円-170万円=390万円

390万円が半年分の運営経費となり、この金額が開業資金の他に必要となってくる当面の運転資金ということになります。

といったところで、ハウスメディアの開業時にかかった費用、及び必要とした当面の運転資金は、

開業費用200万円+当面の運転資金390万円≒600万円

でした。

この金額が、個人or少人数程度の規模で独立する場合の「開業するのに必要な金額」と言えるでしょう。とはいえ、弊社の場合は少し高コスト体質です。一般的な不動産業者やなんらかのビジネスをやる場合では、

300~400万円程度

あれば問題ないのではないでしょうか。

ハウスメディアの毎月の経費について(+一般の会社の場合の毎月かかる経費について)


こちらは弊社の第二期目の経費一覧です。

赤い丸で囲ったところ以外は不動産の売主業者特有の支払いだったり、不動産投資をしているが故に支払い税金がバカ高くなっていたり、また収益不動産の減価償却費が非常に高くなったりしております。

一般的なものだけをピックアップしていくと、ハウスメディアの場合、年間経費は約380万円となります。

1つ1つ項目を見ていくと・・・

広告宣伝費・・・1,841,159円(月額約15万円)
(スーモ毎月6万円、アットホーム毎月3万円、自社HP毎月2万円、ポータルサイト画像連動システム毎月2万円、一般的な不動産業者でもこのくらいの費用は毎月必ずかかってくるはずです。)

水道光熱費・・・471,754円(月額約4万円)
(事務所2階が休憩室として使っていて、最近はそこで寝泊まりして、家事全般を行っているので大分高く…、そろそろプライベートと事業での費用は分けないといけませんね。一般的には月額1万円も見ておけば大丈夫だと思います。)

事務用品費・・・495,473円(月額約4万円)
(パソコンを追加で1台購入、ディスプレイをクアッド(4面)ディスプレイにしたり、事務所に麻雀の全自動卓を置く(業者間交流用)、、、などと調子に乗ってお金を使いすぎました…。また弊社の場合はプリンターのカウンター料金をこちらに含めています。一般的には月額2万円見ておけば問題ない部分です。)

消耗品費・・・149,727円(月額約1万円)
(物件保有数が多いので、多額の除草剤費用がかかります。それ以外にはそこまで多くの物を買った覚えはありませんが、月に数回はクリアファイルとかボールペン、色々な雑貨を買いにダイソーに行っている気がします。一般的にも月額1万円程かかると思います。)

旅費交通費・・・131,754円(月額約1万円)
(ガソリン代や高速代などです。不動産業は車に乗るのが仕事とよく言われます。それだけ移動が多い職業ということですね。月額1万円はどの業種でもかかるのではないでしょうか。)

通信費・・・143,381円(月額約1万円)
(携帯代、インターネット代、電話代です。私が本当に失敗したな・・・と感じているのは、ひかり電話の契約をしてしまったことです。ひかり電話の契約をして電話番号をもらうと、いざフレッツからNuro光などの別のサービスに乗り換える時、電話番号を引き継げません。よって、いつまでも遅いフレッツ光を使い続けなくてはなりません…。あ~失敗した…。また、固定電話から携帯電話の転送にもひかり電話は費用が発生します。弊社の通信費の半分以上は転送電話による電話料金です。もったいない…。一般的には月額1万円見ておけばよいでしょう。)

顧問報酬・・・529,200円(月額4万5000円)
(税理士報酬です。弊社の場合毎月1回来てもらっていますが、特に有用な情報はもらえず、現金出納長はこちらで付け、ほぼほぼ決算書の作成のためだけの費用と化しています。現在はもっと有用なネット対面を主とする税理士もいますので、最初からそういったサービスを受けてしまった方がよいのでは?と感じます。私も時期を見計らってそういったサービスに移行予定です。一般的には月額3万円を見ておけばよいでしょう。)

一般的な不動産業者の場合ですと、15万円+1万円+2万円+1万円+1万円+1万円+3万円≒25万円が毎月の必ずかかる経費として想定しておけば問題ないのではないでしょうか。これプラス自分の欲しいお給料の額がひと月の総経費支出となります。

といったところで、ハウスメディアの毎月の経費は、全体でかかった1600万円の経費から減価償却費の400万円を引き、更に現在は毎月のお給料を60万円と設定しているので、

1200万円÷12=100万円+30万円(前年より30万円お給料を上げた)=130万円

が、毎月のかかる経費となります。

また、一般の不動産業者・その他のビジネスの人の場合は、先ほどの計算より、

25万円+欲しいお給料(ひとまず30万円と置く)+テナント費用(ひとまず15万円と置く)=70万円

が、毎月のかかる経費となります。

また、広告宣伝費がほぼ必要のない業態のビジネスでは、これから-15万円されて、55万円程となります。

ハウスメディアは毎月いくらの利益を稼げば良いか(+一般的な会社では毎月どれだけの利益を出せば良いか)


必要利益に関しては、毎月のかかる経費が割り出せていれば簡単に導くことができます。

ハウスメディアの場合、毎月130万円の経費が発生しますので、130万円の利益を毎月稼ぐことができれば、最低でも会社は潰れません。

ハウスメディアの毎月必要な利益は130万円

下記は弊社の第二期目の損益計算書です。

売上総利益(=経費を引く前の利益)は年間2560万円で、月に直すと約200万円。毎月130万円最低でも稼がなくてはいけないところを、おおよそ毎月70万円ずつ超過することができました。

つまり、私の現在の役員報酬が60万円×12=720万円で、それに70万円×12=840万円の利益超過により会社に利益を残せていますので、私の実質年収は1560万円ということになります。

(自分の給料を上げるか、会社に利益を残すかについてですが、試しに計算してみたところ、年収900万円まではどちらにどれだけ割り振ってもとられる税金に大差は無い、という計算結果となりました。ただし、役員報酬をあげればあげるほど厚生年金の額が増えます。厚生年金よりも遥かに高い運用益を目指せるという自信があるのなら(っていうかほとんどの人は自分の事業に再投資すれば厚生年金以上の利回りでお金を運用できますよね…)、役員報酬は最低レベルに抑えてもいいかもしれません。私も今後は役員報酬を逆に下げていき、支払い厚生年金をミニマムにしていく方針です。)

ちなみに、現在は弊社は消費税の非課税業者(独立後2年間は消費税の納税義務無し)なので、これだけ利益が出ていますが、消費税がとられるようになると一気に利益が萎むことが予想されます。厚生年金、厚生保険、消費税、法人税、所得税、住民税、不動産取得税、固定資産税…、うーん、なんのために我々は働くのか…。

一般の不動産業者の場合も、毎月のかかる経費から考えて、

(毎月かかる経費)70万円+(最低でもこれくらいは会社の利益として残したい)15万円=85万円

程度の利益を残せるようにする必要があります。

また、広告宣伝費がかからない業態のビジネスでは、毎月70万円程度の利益が必要になります。

逆に言えば、毎月最低でも70~85万円程度の利益を出せる見込みがないビジネスはやってはいけない、ということです。(売り上げじゃないですよ、利益です。)

いざ開業!という前に、一度立ち止まって「自分のビジネスモデルは毎月70万円以上は利益を稼ぐことができるのか」を考えることが大事です。この計算が事前に出来ている人が10人に2,3人しかいないので、「自営業の10年目生存率は25%以下」と言われるわけです。

纏めます。

会社設立時の必要な資金量は、

ハウスメディアの場合、約600万円でした。

一般の不動産業者、その他ビジネスモデルの場合300~400万円程度必要です。

また、毎月の必要経費の額は

ハウスメディアの場合、約130万円です。

一般の不動産業者の場合、約70万円が必要です。

その他のビジネスモデルの場合、約55万円が必要です。

毎月稼がなくてはいけない利益についてですが、

ハウスメディアの場合、約130万円毎月稼ぐ必要があります。

一般の不動産業者の場合、約85万円が必要です。

その他のビジネスモデルの場合、約70万円が必要です。

これらの数字から読み解ける重要なことは、

・独立時に金融機関からの融資を頼るにしても、必要資金量の半分(200万円程度)は自己資金としてお金を貯めておこう

・毎月最低でも70万円の利益を出すことができる、根拠のあるビジネスモデルを構築してから開業しよう

ということが言えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です